【生徒作品】 中村美奈 11歳
「一人の少女の心の歴史」
車に乗って会社に行くパパを、私とママは見送った。
「じゃあ、パパ行ってらっしゃい。今日もがんばってね!」
私は大きな声で叫んだ。
「アリス、行ってくるね。帰ったら今日は一緒に図鑑を見ようね」
今日は月曜日の朝で私はお母さんに公園に連れてってもらう予定だった。私はママのフリースのジャケットを引っ張って言った。
「ママ、早く行こうよー。」
「アリス、ママのジャケット引っ張らないで。カバンを探しているんだけど、どこにあるか知らない?」
ママは聞いた。かばんはすぐ見つかって、その後すぐ公園へ向かった。
外の空気はひんやりしていて、私の息が真っ白な雲みたいなやつを作った。もう冬だった。落ち葉を踏みながら私とママは歩いた。私はママと公園にくる月曜日の朝が大好きだった。パパと公園に行く土曜日も楽しみ。パパとママはちがう遊び方をしてくれる。ママは一緒に追いかけっこをしたり、他のお友達も呼んで一緒に遊んだりしてくれるし、パパは自然のことを教えてくれる。葉っぱや木の枝を拾って歩いたり、森の中で虫を探したりするのがパパはすごく上手。
ある日ママのお腹の中に赤ちゃんができた。そして私には弟ができる事になった。ママのお腹の中から動くのを見るのは楽しかった。私は赤ちゃんの誕生がとても楽しみで私は毎日カレンダーを見て、あと何日と数えた。
けれど、生まれたら、ママもパパも赤ちゃんのことばっかりを可愛がって忙しかった。そして私と公園へ行ったり本を読んでくれたりする時間もなくなってしまった。弟の名前はレオだった。私は何度もママに公園に行きたいと行ったけれど、「赤ちゃんがまだ外に出られないから、ちょっとむずかしいかな。」と言われてしまう。
ある時パパにたずねた。
「ねえね、赤ちゃんを泣かないようにできないの?私もうレオが泣いたりするのやだ。」
パパはため息をついて優しい声でゆっくり答えた。
「赤ちゃんというのはたくさん注目が必要で、喋れないから、何か欲しいものや嫌なものがあったら伝えているんだよ。つまり、泣くのは赤ちゃんの仕事ということなんだ。」
レオがハイハイを始めた。私はレオが動けるようになったことが嬉しくて、仲良く遊ぼうと思って人形やぬいぐるみを持ってきてあげたが、口に入れたりヨダレを垂らしたりしていたのでとりあげた。そしたらレオは泣き始めた。たくさん泣いた。それを見て、ママは私にため息をついて言った。
「レオに優しくしてあげて。なんで取り上げるの?あなたはそんな子じゃなかったのに。」
「私はレオのことが嫌い!ママとパパはレオのことばっかり。私のことなんて、もうどうでもいいんでしょ!」
私はドアを閉めて、自分の部屋にかけこもった。
レオが歩けるようになった。ある日私は自分の部屋で絵本を読んでいた。そしたら、びっくりする事に、レオがきて隣にちょこんと座った。そしてしょうがないので、私は絵をさしながら、
「ねずみさんだよ。こっちはねずみさんのママ」
と教えてあげた。もっともっとというので、本を読んであげた。レオは泣かず、他のもので遊びもせず、ずっと最後まで聞いていた。だから、もう一冊読んであげた。それもちゃんと聞いていた。だから私はその日から、毎日レオに絵本を読んであげる事にした。
レオが少しずつ、私とあそびたくて私のところにくるようになってきた。私はレオがどうしたらもっと笑顔になってくれるか真剣に考えるようになった。レオは動物とかが大好き。車や電車や、食べ物の本とかおもちゃも大好き。少しずつレオのことを嫌いじゃなくなってきた。だんだん好きになってきて、可愛いなと思うようになってきた。
今でも、私の作ったものや書いたものをぐちゃぐちゃにされて「レオなんて本当にきらい!」と思う時もある。けれども、朝起きて毎日レオにハグするときに、すごくソフトで温かくて、かわいいなって思う。この抱っこした時の感じがかわいいから、赤ちゃんはみんなに大事にされるのかなって思う。