【生徒作品】中村美桜 14歳

「一人の少女の心の歴史」

いつも、欲していたのは遊び相手であった。

今までは、僕をいつも「どんどん」という音で起こしてくれるお姉さんの足音で1日が始まった。しばらく彼女がバタバタ家を走り回っているのをぼんやりと見ながら、これから始まる1日を考えていると、タロという名前が書かれているボールに僕の食べ物が入っている。僕はそれに舌をつけては、くっついてくる食べ物を食べ、隣に置いてある水も空っぽになるまで飲み干す。それから僕の首には紐がつけられ、彼女の足を踏まないように僕たちは街を歩く。そして街の中では僕のお姉さんの近くに寄ってくる人や虫から、僕は彼女を守る。そして僕たちは広場へ行く。僕はあまり人ごみは好きではない。そこにはお姉さんをジロジロと見ながら、舐めようとしにくる僕の仲間たちがたくさんいて、僕は遊びに集中することができない。

夜にはお姉さんがいつも食べるチキンを僕にくれる。そしてお姉さんが大きなベッドに入ってから、僕はお姉さんの隣に横になり、お姉さんの腕が僕の上に乗せられると、僕は安心して眠りにつけるのだった。

 

ある日、お姉さんは5歳くらいの女の子を連れてきた。その子はピンクのドレスを着ていて、僕が近付こうとするとキャッと叫び、綺麗に結んである三つ編みを揺らしながら走って行ってしまった。彼女の三つ編みは僕の顔に当たり、チクチクした髪先は僕の顔をヒリヒリとさせた。そして、その日からその女の子が僕を叩き起こすのが僕の1日の始まりとなり、ぼんやりとお姉さんの姿を見ていることも出来なくなった。お姉さんは僕の散歩にもあまり行かなくなった。女の子はお姉さんの姪っ子で、しばらくお姉さんが預かることにしたようだった。お姉さんは女の子のお世話で忙しくなって、僕のことを忘れてしまったようだった。僕がときどき彼女のおもちゃをとると、その子だけでなく、お姉さんまでが僕を困った顔で見るようになってしまった。

悲しくなった僕は、お姉さんの関心をひきたくて、車やキリギスしか聞こえない夜には大きく吠えた。お姉さんは僕の態度がどんどん悪くなって行くといって、ついに僕をベッドから追い出した。僕は柵に入れられた。いつも寝ていた僕のベッドは女の子に取られてしまい、お姉さんのそばにいつもいるのは僕ではなく、女の子に変わった。

 

ある時から、お姉さんは毎日紺色のスーツや、明るい色のスカートやハイヒールを履いて、出かけるようになった。朝から夜まで出かけてしまうようになった。そして不思議な黒い鞄を持っていた。そして彼女は銀色のパカパカするパソコンを持ち出し「社員証」と書かれた顔写真入りのバッチを首にかけていた。彼女は僕が起きる前に家から出て行ってしまい、帰ってきても、ご飯しかくれないし、ベットではいつもパソコンを見るようになった。僕のことは以前にもましてもっと、興味を持ってくれなくなった。

 

僕はお姉さんの部屋からおいだされ、柵に入れられていたのに、久しぶりに、何か暖かいものが僕の体に巻きついているのを感じた。最初はお姉さんかと思った。お姉さんの顔は真っ暗やみの中、白青い色で照らされていた。僕はびっくりした。僕を暖かくしていたのは三つ編みの女の子だった。いつもの三つ編みは綺麗に溶かしてあり、ふわふわになっていた。しかしいつも赤かったほっぺたは濡れていた。彼女は僕に

「寂しいから、こんばんは一緒に寝てくれる?」

と言った。ぼくは、

「もちろん」

といって彼女をなでてあげた。久しぶりに人のぬくもりで眠りに落ちた夜だった。