【生徒作品】清水さくら 9歳

「一人の少女の心の歴史」

私は小さいころ、お父さんと公園に行って遊ぶのが大好きだった。だってシーソーに乗るとお父さんは重いからお父さんがおもいっきり下がると、私のお尻がシーソーから飛び上がるほどの勢いで私の体は持ち上がり、私はそういうスリルが大好きだった。だがお母さんとシーソーに乗るとお父さんより軽いからスピードが出なくて全然楽しくない。

ブランコに乗るときだってお父さんは力強く私の背中を押してくれるから、私はものすごく高くいき、そのまま空に飛んでいきそうなくらいだ。だがお母さんがブランコを押すと少ししか押さないであまり揺れない。

だからお父さんと公園で遊ぶのが好き。

プールに入るときだってお父さんが私のことをおんぶして泳いでくれる。浦島太郎と亀になったみたいで、竜宮城に行けそうな気がした。水中で目も開けられるようになったし、泳ぎ方もお父さんに教えてもらった。

だが一つ大きな問題があった。それはお父さんは仕事が忙しすぎてなかなか一緒に遊ぶ時間がないことだった。一緒に遊ぶには会社から帰ってくるのをずっと待たないといけなかった。私は玄関の前の階段に座って早く来ないかなといつも考えていた。仕事がなければいいのにと思ったりした。

帰ってきてからも会社の人に電話をしたり、パソコンで資料を作ったり会社のことをしている。呼んでも「あとでね」のくり返しだ。その「あとでね」は私が寝るまで来ることはなかった。だからある日考えた。もしいつも電話をするために使っている小さい四角いスマホと、あいたりしめたりできる変な四角形のパソコンというものをかくしてしまえば帰ってきたらすぐ遊べると思いテーブルにあった2つの四角いものをとって、お父さんの枕の下に隠した。家に帰っても電話が鳴ってもわからないからお父さんは私とたくさんお話したり、本を読んでくれた。ベッドルームに上がっていったお父さんが叫んだ。

「なんで俺のスマホとパソコンがこんな場所にあるんだ!」と叫んだ。するとお母さんが言った。

「知らないわ」というとお兄ちゃんが言った。

「僕じゃないよ」というとお父さんは私のことを見た。お父さんは私のことを怒った。だからお父さんは私を公園に連れて行ってくれなかった。

お父さんと遊びたくてしたことが、反対にお父さんと遊べなくなってしまった。

お父さんは大きな仕事をまかされ、ますます忙しくなった。朝も早く会社に行ったり、夜家に帰ってきて夕食を食べてから、また会社に行ってしまうこともある。お父さんに「おやすみ」も「おかえりなさい」も言えなくてねむれないから、そういう日はいつもお父さんの部屋のホワイトボードにメッセージや絵を書いておいた。「お父さん、おかえりなさい」とかお父さんと私が遊んでいる絵とか、たまにべっこう飴を作ったときはそれも一緒に置いておく。私は朝起きると、すぐお父さんの部屋に行ってメッセージの返事を読むのが楽しみだった。

6歳の私の誕生日に我が家に私がずっとほしがっていた犬がやってきた。お父さんがお母さんに相談してサプライズで飼ってくれたのだ。私がずっと犬を飼いたがっていたのをお父さんが一番よく知っていた。だっていつも公園に行ったとき、散歩中の犬を見つけては話しかけたり、だっこさせてもらったりして犬から離れようとしなくて私はお父さんや犬の飼い主をいつも困らせるからだ。

その日から私はその犬と公園に行くときも、寝るときもいつも一緒だ。お父さんが仕事で忙しくても、もうさみしくない。休みの日には私とお父さんと犬の散歩に行く。公園でお父さんと私がシーソーやブランコをする時は、犬はお父さんにやきもちをやいているみたいに見えた。その証拠に犬は私の言うことは聞くけど、お父さんの言うことは聞かない。