エッセー 「地震と津波が人々の人生を変えている」


エッセー
地震と津波が人々の人生を変えている
篠島 匠人


 地震と津波は強制的に人々の生活を変えた。そして、その後の生活も自ら望んで変えている日本人が多勢いる。受動的な行動が能動的行動を呼ぶ構図が今回の地震で成立している。そしてその結果は決して火事場泥棒や資源の争奪など、社会の秩序を乱すものだけには至っていないのである。

 世界最大規模の地震と津波は、震源付近の海岸沿いにすむ人々の生活をことごとく破壊した。これに加えて、福島第一原発では核燃料が溶け出し炉心融解に至り、放射能をまき散らしている。これは福島県での復興を大きく妨げている。原発難民は今も放射能で汚染された地域から何十キロも離れた避難所で生活しているが、何も出来ることがない。「食う、寝る、テレビを見る」にとどまる原発そばの避難所での生活。避難者の多くは高齢者で、彼らには就ける職も無く、今まで持っていていた財産も流され、頼るところもない。60代という年齢は、何かを始めるにはもう遅すぎると言う。天災は大抵人々の生活を変える。台風予報のように地震予知ができれば、それに則った適切な行動が予め取れるかも知れない。しかし今のところ、地震や津波に対しては、私達は受動的にならざるを得ない。

 しかし一部の日本人、特に若者の間において、今回の震災が今までの彼ら人生を能動的に変える機会にもなっている。その傾向の一つに男女間の結婚がある。震災で自分が独り身であることを実感し、互いに頼れる人間や家族を欲する人々が増加しているという。「今回の震災で人を愛するというのはどういうことかを考えさせられた。家族の絆の大切さを確認した」4月に入って結婚指輪の購入数は前年同期比で4割増えたという。震災が結婚を決意する機会になったのは事実だが、彼らは天災から能動的に今の生活を良い方向へ改めようと自発的に行動もとっている。

 災害は私達の生活を変えた。しかしそれは悪い方向へと動くものだけではない。彼らが協力しあって良い方向へと進んでいく努力が、結果的に生活に変化を見せている。震災をよい機会と捉える日本人がいれば、地域社会は今よりも良くなっていくと思う。