小論 「科学はどう人類を変えていくか」


小論
科学はどう人類を変えていくか
中村 茉貴


 疑問と発見を繰り返し、科学は進んでいく。その進歩と共に、人類は世界の仕組みをより深く解明したり、何かに対する新たな手段を得たりする。科学は、人類の脳を多次元的に広げていくのである。

 まず、地質学である。スタンフォードの科学チームが最近、火山噴火による古代の石やガラスに含まれた雨水の化石サンプルを三千近く分析し、シエラネバダ山脈の地質学的歴史を再現した。この地域が約3億年は熱帯ジャングルであった、4.9億年前には山脈の山々が既に1万フィートに達していた、地殻変動が火山噴火を促進した、等の発見があった。地球の歴史を辿り、明かしていくことは、地球上での様々な進化の解明にも繋がる。そしてそれらの歴史を繋げていく事で、科学者らは更に地球の存在のメカニズム解明にあったっているのである。そして人はその分地球の闇の部分を減らしていく事になる。

 次に、医学である。高橋理明氏はヒューストンに移住していた1963年、子守をしていた同年代の女児を介して、息子が水痘を患ってしまった。息子は回復したものの、その経験と知識から水痘ワクチンを開発しようと決意した。当時、水痘は癌と関連しているとされ、帯状疱疹等の過度な心配が無いことを培養された人間の胎芽で証明し、世界初の水痘ワクチン開発に成功した。現在、アルツハイマーやハンティングトン病を含む「不治の病」の解明が進んでいる。つまり、今までは手の施しようの無かった病気を解明し、結果として、それまでは絶対的であった「身体的、或いは精神的な」死をも回避可能にしているのである。一方で、予防注射では水痘のウイルスは体内に潜伏して活性化し、帯状疱疹になる為、水痘は回避できても、ウイルス自体は殺せないため、ウイルスとの医学の戦いも、又激しくなる。

 最後に、脳科学である。人の脳内で何が起こっているのか、人類と猿とで何が違うのか、人の「意識」とは何か、などである。他にも、「脳に異常のある患者を研究することで、あくびの伝染性などの脳科学的現象を解明」している。ラマキャンドラン氏が「(人間においては)進化が類人猿の脳の様々な機能を根本的に変化させ、新たな機能を作った」としており、その一例として挙げられているのが言語である。その誕生により、人間と類人猿の間には「天地の差」ができたとまで言っている。ダマシオ氏も、ホモサピエンスの頃から、人類は遺伝子的にはさほど変化を遂げていないが、「独立した思考を持つ「反逆的」な人々や「読み書きの誕生」」-つまり社会的・文化的要素が地球上の歴史の短時間で人の「意識」に多大な変化をもたらした、と語っている。脳科学で人間の思考・行動の仕組みを知ることは、自身を知る事の一歩となる。思考というものを発達した人類にとって、自らが「何で、何処から来て、何処へ行くのか」と言う事は、一つの大きな課題である。これも前述の二科学と同様に、しかし別の視点から人類・世界の解明に当たっているものである。

 一方、科学に鈍感な人はどうなるのか。単純に言うと、時代に置いていかれる事は明確である。科学とは、未解答の疑問・課題への取り組み方法である。人が自身の存在や存在している地球自体の成り立ちを多面から解明して行き、同時に新たな開発へと先駆していくなか、唯々その結果と産物を利用して生きていくのみとなるのである。例えば、日本の年間の科学論文出数の低下が問題視されている事も、その表れである。

 微生物の世界から宇宙・銀河系外にも及ぶ世界のメカニズムの解明や、時空を超えた疑問の解明。科学は、人類をより多次元で、全能的なものにしていく可能性をものであろう。