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小論 「アリゾナの殺人は何の副作用なのか」

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小論
アリゾナの殺人は何の副作用なのか
篠島 匠人


 先週アリゾナ州で起きたガブリエル・ギフォーズ下院議員の銃撃事件では、政治的な印象操作が容疑者に大きな影響を与えて発生した。本来ならなんの問題もないマスメディアの言論が突然副作用となって症状を引き起こした。

 アリゾナは一般的に保守系が多数派を占める州である。今回銃撃されたギフォーズ議員は民主党所属の下院議員だ。しかし不法移民には国境に警備隊を配置するなどして対策を講じるべきだと主張し、拳銃も所持する銃規制の反対派だ。彼女は完全なリベラル左派とは言えない。しかし22歳ジャレッド・ロフナー容疑者は精神的に安定した状態とは言えなかった。共和党アリゾナとしての地域性に影響され、オバマ大統領が指揮する政府に不満を持っていた。

 ニュースメディアの媒体にテレビジョンを使用する人はどの支持派でも6割超だが、新たに出現したインターネットを利用する人も4割近くいる。18歳から29歳までの年齢を対象にすれば、65%近い人間がインターネットを利用して情報を得ていると答えた。インターネット依存症の人20名の内、8割にあたる16人が双極性障害だと診断されたという報告がある。アメリカは世論誘導にレトリックを多様する国であり、強固な政治観を持てない人間が無意識の内に情報メディアに接触すれば、あらゆる情報に振り回される。

 右翼派コメンターグレン・ベック氏は「オバマは白人嫌いの差別主義者」と表現し、同派ラジオアナウンサーラッシュ・リンバーグ氏も「オバマには失敗を望んている」と語った。加えて元アラスカ州知事のサラ・ペイリン氏が Twitter や Facebook に「撤退などせず、再装弾せよ!」と発言した。ペイリンは同時に、選挙戦対抗馬としてのターゲットマップとしてギフォーズ議員を含む民主党候補の事務所をライフルの的で表現している。

 しばらくしてギフォーズ議員の事務所では窓ガラスが割れるケースが多発したり、脅迫を受けたりしていた。この嫌がらせと今回の銃撃の関連性は今のところ無いが、逮捕された容疑者が1週間前に計画していたという暗殺の実行を示唆する文書の発見は、決して突発的な犯行ではなかったことを裏付けるものだ。過激な民主党批判が今度は党員個人に対する憎悪へと変化したのである。

 今回の襲撃事件がメディアによる副作用であることは明らかだ。言論の自由は規制されてはならないが、精神の不安定な人間がインターネットに安易に近づけるような環境を作ってもいけない。画面の向こうの人間は必ずしも普通の人間ではないことを自覚し、インターネットを始めとしたメディアでの広報戦略を、今後多くのアメリカの政治家が考えることになるといえる。

電子版投稿者: T.Sasajima

January 30th, 2011 at 10:55 am (PDT)