小論 「日本病の症状とその療法」


小論
日本病の症状とその療法
篠島 匠人


 日本人は病気にかかっている。認識と知力、倫理の無い社会では人間としての価値観を損ないながら、国全体が病気にかかっているのでそれに気づく者は少ない。日本病は正しい教育と、その日本病にかかっている人間が少ない外国での経験と海外での教育を得た海外子女によって克服されなければならない。

 経済第二位の大国を自負する国が中国に抜かされた今年、日本は科学技術を唯一の取り柄のようにしている。国全体をあげて取り組む科学技術振興には、人間のiPS細胞を人工的に生成しようとする研究も含まれる。遺伝情報発現のシステムの堅牢さや柔軟さを検証するために人口タンパク質合成系を創造したり、生命機能を工学的に捉えマイクロマシンで再現する試み、また生命の起源そのものを解明するために化学で人工細胞を作るという。科学技術の進歩のみが先行し、科学の方向性をを批判することは自国成長を妨げると思って誰も行っていない。

 米国ではそれを危惧する団体が存在する。幹細胞の研究は行ってはならないと名乗り上げる。それは宗教思想を基本としているのではなく、倫理的に考えて問題があるから抗議しているのだ。それは、人間が人工的に生成可能になってしまえば、近い将来にそのままの意味で、人間の大量生産が開始されるからである。本来の人間が人間としての意味を失う。科学者はその到来を近づけている。アメリカにハードルシステムが存在するというのは、目的推進派が全体を占めている日本の社会と違って、そこに反対するグループも立ちあって議論を展開することで成り立っているので、何が本当に問題なのか、これを実行することが人間として正しいことなのかどうかに気づく機会がある。科学の力を頼りに夢見る研究者と、持っている技術とその発展で成長を願う社会が将来の結果を考えずに実現させてしまえば、それまでの社会はもう維持できない。これは知識を突出させた結果露呈した倫理の欠如といえる。

 日本の政治家たちは自国の問題に具体的な案を示さないまま解決できずにいながら、口だけで国民を幸福にするポピュリズムの政治だけをしている。ここ20年で14人、この1年だけで3人が首相を経験する日本の政治体勢。現在展開されている民主党代表選挙で菅直人の目指す国家は最小不幸の社会であるのに対し小沢一郎の国家観は普通の国として自立するとしている。しかし日本には外交関係で多くの領土問題を抱えており、ロシアの北方領土、韓国の竹島においてそれらが返還されるように求めるような具体的交渉を行っておらず、現在に至っては尖閣諸島も略奪の危機に晒されている。ロシアでは中国との領土係争に関して、島の一部を中国に引渡した上で南北に国境線を引き、さらにそこから互いの開発区画を決めて商業発展を遂げつつある。軍隊は去り、島には橋がかけられた。この場所における中国とロシアの領土問題は決着し、さらにここからビジネスチャンスを創りだした。お互いの中で妥協はあったにしろ、これは自国に最も利益を生み出せる解決策を提示し合った。ロシアは北方領土のニ島返還には応じるとしながら、日本はあくまで四島の全返還に固執するがために、未だ領有権を主張するロシアとの合意には至っていない。知力からうまれる論理が欠如しているため、互いの利益になることを自ら捨てている。このような外交を首相が行っていて国民を幸福にさせることは出来ない。

 サンデル教授の講義は日本の大学生を刺激させたというが、その内容は「イチローが高収入に値するか」とか「漂流ボートの殺人を許すか」というものだ。サンデル教授の講義は高く評価されているが、必要条件をこなせていなければ授業に参加する意味を成さない。もともと正義を学ぶにあたっては対話が不可欠であることをソクラテスが説いており、哲学を学ぶ人間はその旨頭に入れてあるべきである。それを中学生、高校生の時からすることのないまま大学生になって初めて対話型の講義をすることに問題がある。サンデル教授が行った講義を日本の教育機関が行えないのは日本の将来にとって大きな損失だ。学生が知力を持っていないが故に倫理観をも学び通すことが出来ない。対話を行えなければ言語的、人間的に成長しないので、日本にある国連大学に日本人が通ることがないという事態も起こり、また親が死んでも届けを出さず年金を不正受給するという現状が社会に回ってしまっている。

 日本人は地道な努力を好み、あまり目立つことを好まない。それを矯正するための教育を正しく行わければ、隠しながらものをくすねる無秩序が溢れ、世界に活躍しない日本人だけになってしまう。病気の克服を早める為に、海外に住んでいる海外子女も有効活用し、影響を受けなかった日本人が主導するべきだ。